ついにセルフエステの危害とトラブルを国民生活センターが公表!いちばんの問題点はなに?
セルフエステ、ついに問題になったか。遅いよ!と思っている業界関係者は多いハズ。estheteでも昨年「セルフエステは危険!遂に日本エステティック振興協議会が注意を呼びかけ」という記事で取り上げました。機器の操作を訓練されたエステティシャンが行う施術を、素人が突然自分で自分にあてるという前代未聞のびっくりサービスなのだから、プロのみなさんはハラハラしながら見守っていたと思います。さて、今回の国民生活センターが行った注意を見ていきましょう。
契約と解約。導入機器。問題はいつもの2つ
国民生活センターが発表したのは「相談件数が増えている」「危害やトラブルが発生している」ということ。数字でいうと、2014年から2019年年末までに119件、そのなかで危害やトラブル報告は23件。全体の約20%程度です。ちなみに、2019年は年間で13件。それまでは年間に数件の相談量だったそうです。
※全国の国民生活センターのネットワークDVのPIO-NET(パイオネット)調べ
相談内容は「機器で火傷した」「解約させてくれなかった」というもの。いつもと同じじゃん、と思ってしまいますが、機器の方はちょっと深刻です。
セルフエステには、HIFU(ハイフ)や、「プロしか使えない」「セルフエステには卸していない」RFなどの機器が入っている場合があるのです。
いまさら聞けないHIFUの危険性
HIFUに関しては様々な事件がありすぎて「どこから説明しようか」という感じが否めませんが、国民生活センターでは以下のような説明をしています。
HIFU(ハイフ)機器とは、人体の表面を傷つけずに、超音波を体内の特定部位に集中させることで加熱し、熱変性を生じさ せるものである。「脂肪細胞を溶解させる」などと説明し HIFU 機器を用いた施術を行うエステティックサロン等で危害が発生するなどのトラブルがみられたことから、国民生活センターでは平成 29 年3月2日に「エステサロン等での HIFU 機器に よる施術でトラブル発生!-熱傷や神経損傷を生じた事例も-」を公表している。
実際の相談内容
【事例1】
HIFU機器を自分で操作し顔にあてたところ、唇の神経を損傷したクーポンサイトでHIFUという機械を自分で顔にあてるエステを予約し、店舗に出向いた。最初に動画を見て使い方の説明を受けた。1回ずつの都度払い約3,000円で、説明通りに正しく使っていた。何度か通っていたが、先日使っていたところビリッと唇に痛みが走り、感覚 が変になった。下唇、口角、内側の感覚がないため、神経内科を受診すると「神経損傷で唇の感 覚が無くなっている。治るかどうかは不明。自然に治るかもしれないし、どのように回復するか分からない。全治何カ月かは不明だが年単位かもしれない」と言われた。店舗からは「今回の1 回分の代金約3,000円は返金する。病院に行き、治療費を請求するように」と言われたが、今後 も治療代を払ってくれるのか不安だ。
(2019年11月受付 30歳代 女性 治療1カ月以上)
【事例2】
HIFU機器を自分で操作し、顔のリフトアップをしたら耳などに不調が生じ た クーポンサイトを見て、自分でHIFU機器を使って顔のリフトアップをする店を見つ けて行った。店員から書面を渡されて説明を受けた。施術の際には店員が隣に座り、使用上の注 意があった。その後15分ほど自分でHIFU機器を顔にあてた。施術中にピリッと痛みが あり熱くなった。帰宅後、耳などに不調が生じたため、翌日耳鼻科を受診すると、因果関係は不 明だが顎の下の神経が麻痺しているかもしれないと診断され、薬を処方された。その後も耳鼻科 に通院したが完治せず、現在も体の右側全体に違和感がある。
(2019年8月受付 20歳代 女性 治療1カ月以上)
20代が多く被害。多くは顔で、皮膚障害が最多
寄せられた23件の危害を細かくみたデータも公開されています。(2014~2019 年度受付で、2019 年 12 月 31 日までの PIO-NET 登録分 119 件のうち、不明・無回答等を除き、分析しているもの)
危害部位:顔面が 10 件と最多。目、口、耳などもあわせると頭部全体で 16 件、大半を占める。
危害内容:皮膚障害が 48%、熱傷が22%、その他30%。
危害程度:「医者にかからず」が52% 、HIFU(ハイフ)をうたった機器の操作によるものなど「1カ月以上」が14%、1〜2週間程度も14%。
もし20代の女の子がサロンに来たら、エステティシャンの皆さんはHIFUのコースを勧めるでしょうか。きちんとカウンセリングして悩みを把握し、肌状態や年齢を考慮した解決策を提案する、エステサロンなら当然のこと。しかし、この行程がセルフエステにはありません。機器の売り文句だけで「これがいい」と決めてしまう。「小顔になりたい」という20代のお客様の解決策は、もしかしたらダイエットかもしれないし、表情筋の問題かもしれない。エステティシャンではないセルフエステスタッフが機器の使い方を教えるのは、初回の1回だけ。あとは、動画や使い方資料を見ながらお客様が自分で機器を当てるのが普通です。神経や筋肉、骨の位置などを踏まえながら注意深くプロープの動かし方を学ぶことなく、機器を使うなんて・・・恐ろしすぎる!
実際はセルフエステで何が行われてる?ボツを余儀なくされたセルフエステ体験記を公開
今から2年前、セルフエステが話題になりはじめたころ「ウチのメリットにならない」という理由で公開を拒否されたボツ原稿をサロン名を伏せて公開します。
エステをよく知る人がセルフエステを利用すると、どんなことを思うのでしょうか。
定額制セルフエステがオープン! このニュースは皆さんご存知かもしれませんね。私はインスタグラムを見ていて気がつき、大好きなモデルの美しい姿に惹かれ「行ってみたい!」と、職権乱用ぎみに予約を入れました。
私が私のエステティシャンになる「セルフ」という選択
諭吉さん1枚で1ヶ月通い放題という仕組みのせいか、新規の予約枠はすでに空きが少なく第3希望日程になりました。痩身マシンが導入されていて、それをエステティシャンではなく自分自身でかけるという、今までになかったシステム。ターゲットは、もちろん一般の方。プロ向けじゃありません。導入講習を受けなくてもプロ用の痩身機器を触って自分を施術って、すごくないですか?
ドキドキしながらおうかがいすると、エントランスは女性でいっぱい! にぎわっていました。大きな胡蝶蘭がずらっと並び、いい香り。女性専用のサロンって安心しますね。入室のシステムは、まずエントランスで会員カードをスキャン、空いているお部屋が表示されるという仕組み。2回目からはスムーズに利用できそうです。
ひと通り説明を受けて、いざ施術ルームへ!
個室には、大きな鏡とその前に椅子代わりのベンチ、その横におおきな業務用痩身機器が鎮座。壁には呼び出しボタン付きのタブレットが設置され、さらに手持ちのタブレットで使用方法が動画で確認できるようになっています。エステサロンというよりは、トレーニングルームという雰囲気。エステに来た、と思っているとギャップに驚くかもしれません。
初回はインストラクターと一緒に15分施術チャレンジ、2回目からは45分すべて自分で行なうということ。果たして1回の短いレッスンですべての機能を使いこなすことができるのか・・・。モニターから流れる動画を見ながら心配になりました。
いよいよ施術開始!
美容機器は3つの機能が搭載されていますが「安心してご使用いただけますよ」と美人のインストラクターが説明をしてくださいました。初回体験はどこか1カ所、ということなので、お腹を選んでジェルを塗布。機器の操作自体は、端から順にボタンを押していくだけという簡単なもの。しかし、機能によってプロープが違うから、その時点でちょっと混乱してしまいそう!
インストラクターは私の真横に立って、動きをナビしてくださいます。なので、鏡越しに彼女を凝視して脳裏に焼きつけ、練習の15分が終了。残り30分を自分でやる!ということで、使用動画がが流れるタブレットを握り締め、スタート!最初の行程はプローブが小さいので比較的動かしやすく、じんわり温かくなる感じで気持ちよかったです。この調子!と、次のボタンに。これはプローブが大きくて大変!体感も先程より温度も高いので、もう汗だくになりながらおなかを必死にグルグル。最後の行程は、プロープに吸引も付いているのでエンダモロジーを思い出す体感。ヘッドも小さくて丸かったので動かしやすく、「あ、慣れてきたかも」と思いました。
が、終了する頃にはヘットヘトになってしまいました。目の前が全身映し出される鏡なので、本当に自分の(容姿)との戦いで、嫌でも客観的にヤバさを突きつけられ続け、メンタルにきます。そういう意味では、とってもジム寄り。それに、「エステティシャンの皆様、いつもありがとうございます」と土下座したくなるレベルの腕の疲労感。プローブを持って動かすのって、大変なんですね。お腹しかグルグルしていないのにこの疲労感。全身を施術しているエステティシャンはどれだけ大変なんでしょうか。
エステに何を求めていたのかがわかった
セルフエステは現実を突きつけられるので、リラクゼーション効果はまったくといっていいほどありません。背面も、手が届かないのでもちろん施術できません。そして、いつもは爽快でほっとするはずの終了後は、汗だくでハアハアと肩で息をしている自分。いつもと違いすぎる!
こうなってはじめて、エステでは、たとえ痛い施術でもリラックスしていたことがわかりました。これは本当に意外!ここに来なかったら気がつかなかったかもしれません。そして、施術者との2人きりの空間ですべてをさらけ出すので、いい意味でも悪い意味でも現実を共有していたんだなとわかりました。「すごくすっきりしましたよ!」「ほんとうですね、楽になりました」このやりとり、なんとなくしていましたが、大事だったんですね。
セルフエステは、ストイックに自分自身の美を追求する場でした
終了後は、ジムで走った後にオールハンドの施術を受けた感じというか、不思議な感覚になりました。気になる効果もちゃんと出ていて、くびれのカーブが鋭利になっていました。あんなに疲れて汗だくになったんだもの、成果が出て良かった。感覚としてはジム寄りです。照明も明るいし、お水もガンガン飲んでいい!ひとりなので思いっきりやれます。(初回のレクチャーは至近距離で思いっきり見られますが)
エステの機器を使っていても、セルフエステならぬセルフトレーニング。自分のペースでできるので、隙間時間を使ったり短期間で結果を出したり、今までとは違う体験ができそうです。エステティシャンの皆さんもぜひ体験してみてください!
国民生活センターの発表資料にも、「機器の十分な使用法や注意がなされないことによる事故の可能性」を言及した部分があります。
「セルフエステ」では、初回はスタッフがそばでエステ機器等の使い方を説明してくれることがありますが、2回目以降は基本的にスタッフがいない中で、自分でエステ機器等を操作することになります。エステ機器等の仕組みや使い方、人体への影響などを十分に理解しないままに操作すると、思わぬ事故につながるおそれがあります。 相談事例には、HIFU(ハイフ)理論を用いたとうたう機器や、ラジオ波機器などのエステ機器等を自分で操作して危害を負ったケースがみられます。また、「セルフエステ」の規約等では、エステ機器等の操作は消費者の自己責任で行うことを求められるケースが見受けら れます。中にはエステ機器等の故障により危害が生じたと思われる場合であっても、事業者は一切責任をとらないとして、トラブルになるケースもみられます。 事業者からエステ機器等の操作方法、リスクや傷害を負った場合の対応等について十分な説明 を求めましょう。また、リスク等を十分に理解したうえで本当に契約するか慎重に検討し、自分で安全に機器の操作ができるか不安な場合は契約をしないようにしましょう。
問題点となっているのはなにか。プロの皆さんはココをよく把握して問題把握に努めてほしいと思います。「エステはグレーだから」と世間は見がちですが、エステサロンやエステティシャンの役割は美しさを追い求める人々にとって、なくてはならないもの。
セルフエステとエステサロンを一緒くたにされないよう、みんなで守っていきましょう!
Text :Reina Amamiya,Yukiho Ootake
文中の引用はすべて、国民生活センターの発表資料「セルフエステ」の契約は慎重に検討しましょう!-安さ、手軽さが強調されている一方で、危害や解約トラブルが発生しています- より抜粋