この業界に男ってアリ?女性をトリートメントする男性セラピスト ✕ 男性エステティシャン対談
美容業界で活躍する男性セラピスト育成のパイオニア MTS「 男のアロマ塾」を主宰する早川晃一さんと、「エステ業界の貴公子」と呼ばれる男性エステティシャンのヒィロさん対談が実現!
ジャンルの垣根を超えて活躍するお二人のお話をお届けします。
アロマテラピストとして第一線で活躍する早川さんは、「男性だから」とアロマテラピーの学校で門前払いされた経験から、 男性専用のアロマスクール「男のアロマ塾」を開校した人物。
早川晃一
一般社団法人:日本メンズアロマセラピスト普及協会 代表理事メンズセラピストスクールMTS「男のアロマ塾」塾長
整体師として、東洋医学と美容を融合させた第一人者として著名な谷口光利氏に師事し、中医学や整体その他スキルを学ぶ。アロマテラピー・整体・リフレクソロジー・PNFなど各種療法の資格を取得後に、サロンを開業し経験を積む傍ら、整体学校にて講師としても活躍。その後、日本では数少ない男性アロマセラピストとしてアロマサロンをオープンさせ人気を博す。2008年に、MTS「男のアロマ塾」を開校、日本における男性アロマセラピスト育成のパイオニアとして続々と人材を世に輩出している。
男性というだけで門前払いの日々。厳しいトリートメントの世界
早川 これからは癒しがくる、と思って何か新しいことをしたかったので、アパレルから転職を決めました。でも業界のことを全く知らなかったので、まずは整体など技術を学ぼうと学校に行きました。実際に現場で働いて、お客さんにありがとうと言っていただける仕事が自分に合っていたんでしょうね。働きながら資金をため、自身のお店を開店。整体をメインにしていたが客層の7,8割は女性のお客様でしたね。
女性ってホルモンバランスもあるし、心の癒しを求めている人が多かった。香りが心につながっているということを知り、取り入れていこうと考えました。
ところが当時は男性が入れるアロマの学校は皆無。すべてに断られました。男がアロマというイメージがなく、なんの用ですか?と言われてしまう。授業の際に、相モデルの女性が服を脱いで実技を学んだりするので、嫌がられるのはわかるんですけどね。
困りました。
それでひとづてに当たりまくって、特例で男性でも入れてくれるところを見つけたんです。とりあえずは学ぶことができて、卒業後は自分のお店で整体とアロマ2本立てで進めていくことになり、男性セラピストのアロマサロンとして繁盛するまでになりました。
ヒィロ トータルで何年くらいこの業界にいらっしゃるのですか。
早川 22年くらいになりますね。
ヒィロ スクールを始めたとき、どうでしたか?
早川 男性セラピストが当時ほとんどいなかったので、まず僕自身が偏見の目で見られました。
もちろん自分のお店のお客様はそうではないのですが、お仕事何やられているんですかと聞かれて、「整体師です」なら「いい仕事ですね」と言われるのに、「アロマセラピストです」というと途端に変な目で見られるんですね。
「男性が女性にオイルトリートメントするなんておかしい」と存在自体を否定されたりもしました。当時はスクールに入ろうとすると門前払いばっかりでした。
ヒィロ 男性セラピストは少なかったですか。
早川 きちんとした技術を持った男性セラピストは、当時はほとんどいなかったですね。
本物の技術と知識を持った男性セラピスト自体が圧倒的にいない。それが悔しかったのもあって、地位、認知度が上がるといいなと思い続けていましたが、プロトタイプになるような人物が出てこない。このままでは、いつまでも変わらないと思って、自分でスクールを立ち上げてやっていこうと思いました。
整体の時もインストラクターをやっていたので教えるスキルもあるし、本物の知識と技術を持った男性セラピストを増やして、世間の認知度をあげたい。そうすれば男性セラピストの地位も上がっていくと思い、男性専門のアロマスクールを2008年に立ち上げました。
ヒィロ すごいですね。その思い。10年前にスクールを始めて、何年目くらいから認知されてきたんでしょうか。
早川 つい最近だと思いますね。田村さんのような男性エステティシャンもまだ少ないと思いますが、男性アロマの世界もまだまだこれからで、今がちょうどターニングポイントかもしれないです。これから出てくる男性セラピストが頑張れば「すごくいいね」となる業界になってきました。今までは、男性が学ぶ環境がありませんでしたが、今は学べる環境が増えてきた。そのため、きちんとした知識と技術を持ったセラピストが出てきていますし、今後も増えてくると思います。
ヒィロ それは素晴らしいですね。どんどん増えてほしいです。どんな方がスクールにいらっしゃるのでしょうか。
早川 男のアロマ塾では、「将来、アロマを仕事にする」ことを目的としています。なので業界でスキルアップを希望される方から、未経験で副業でや脱サラして、という方も結構いますよ。
ヒィロ 脱サラですか。どんな職業をされていた方なんでしょうか。
早川 IT系とか・・・なにげに多いですね。日中はずっとパソコンに向っていて、週末にアロマセラピストとして活動している、という方もいました。日中は人とコミュニケーションをとることが少ない一方で週末は接客業をしているのですから、面白いですよね。
ヒィロ オフィスで働いている人は、実は人としゃべることが少ないのかもしれませんね。僕は、お客様と会話をするとフレッシュな気分になります。
早川 お客様をアロマセラピーで癒しながら、自分もお客様とのコミュニケーションで癒されているということかもしれませんね。
どんな人が癒し業界に向いている?
早川 人を癒してあげたいとか、何かをすることで喜べる人ですよね。やはり女性を相手にするので、気遣いができる人、奉仕の心を持っている人がいいと思います。
ヒィロ そうですね、僕も自分の経験からたくさんの方をきれいにしたい、若い人にもエステを身近に感じてほしい、と思っていますから。
早川 スクールをしていて感じるのは、もともとアロマなど癒しに興味があって、それを仕事にしようとする方がいる一方で、今までアロマなんて使ったこともなかったという人がビジネス目線で手に職を、となる人が5:5くらいなんですよ。アロマに興味があったひとは、自分自身が疲れ気味で癒されたいと潜在的に思っていたんじゃないでしょうか。その思いから周りも癒したい、になっている気がします。
施術者は男性も女性もいるのだと思って欲しい
ヒィロ 男性セラピストを牽引していく中で、美容、健康、人の体をガッツリ勉強している人がいる一方で、男性がマッサージすることをすごく売りにしているサロンもあると思うのですが、女性ホルモンが活性して・・・など。僕はこれをエステティシャンとして見ているとあまり良いと思わないのですが、早川さんはどうですか?
早川 そうですね。僕個人の考えとしてはそもそも「女性専用」と謳うのがあまり好きではなくて。
ヒィロ そう、僕もそうです。
早川 アロマセラピストという業界は、海外では男女どちらもいるのが当たり前。日本では女性がほとんどなので、「男性のセラピスト」は別カテゴリなんですよね。それが僕はいやで、その垣根を取っ払いたいと思っているんです。
美容師さんなどと同じで、セラピストのなかに、男性も女性もいるのだと思って欲しい。だからこそ男性のセラピストがもっと増えて欲しいし、そういう意味で女性専用という打ち出しはあまり好きじゃないと考えているんです。
ヒィロ 僕もそうですね。僕自身「男性エステティシャン」になるんですけど、ぶっちゃけ男性でも女性でもどちらでもいい。たまたま僕は男性だっただけ。もちろん手の大きさだったり、体温だったり違いはありますが、やっていることは、同じ。そこに男性だから!とか男性が触ることで女性ホルモンが云々というのは、あまり意味がないんじゃないかと思っているんです。
早川 確かに、女性と男性のタッチングは違います。女性のしなやかなタッチングの一方で男性の力強さ、重厚感だったり包み込む感じ、ダイナミックさはあると思います。それぞれの利点をわかった上で、女性アロマを受けたいのか、男性アロマを選ぶのかをして欲しいですよね。そこにホルモンが・・・のような理由づけはして欲しくはないですね。
ヒィロ あくまで手技の違いですよね。僕も開業当初は怪しいとかイメージを持たれたところはあったので、そこは感じます。男性も女性も同じエステティシャンというくくりで見て欲しいです。
男性施術者ならではの強みとは?
早川 先ほども言いましたが力強さ、重厚感やダイナミックさは男性ならではだと思いますね。あと、ドライ系のマッサージもそうだと思うのですけど、芯に響いてくるというところはあると思います。奥にグッと入ってくる満足感はよりあるのではないでしょうか。
あと、お客様からよく「安心感」があると言われます。
ヒィロ それは、僕も言われますね。あと、男性はフラットな生き物だと思うんですよね。女性は子宮があることで毎月上下がある。そういう意味では、まったく違うと思っていて。
マイナスな意味ではなく、揺らぎがないところが安心感につながっているんじゃないかな?と思っています。
その一方で、音楽活動のときにも感じるんですが、握手会などをすると、開催毎にどんどんきれいになっていく女性がいます。それは確かだと思います。
早川 お客様によく言われるんですが「あなたのところに通うようになって、人からきれいになったと言われるようになった」と言われませんか?
ヒィロ あります、あります。
早川 医学的に掘り下げて行けば、女性ホルモンが活性されて、などあるのかもしれませんが、でもそこは「男性」というくくりではなく、僕のアロマを受けにきてくれたから、と思っています。
ヒィロ その人が気に入っているから、と指名する。会いたい人に会いに行くような気持ちは、少し感じるかもしれませんね。非日常感ですね。
業界の求人から男性セラピストへの変化を感じてきている
早川 それに関連するかもしれませんが、男性指名の求人が増えてきています。今までは、もともと男性のスタッフだけのお店の求人がほとんどでしたが、最近は、女性スタッフしかいなかったお店が、男性を入れてみたいという求人が増えてきています。これは、お客様からの声が増えてきているからなんだとか。「男性セラピストのアロマを受けてみたいんだけどね」といった形。オーナーさんが、じゃあ、と男性を雇うようになってきているんです。
ヒィロ すばらしいですね
早川 僕らの時代でしたら考えられないこと。だからかなり変わってきていると感じます。最近の若い女性は、そもそも男性への拒否感がなくなってきていると思いますね。
ヒィロ それはありますね。時代ですね。結果が出ればいい!みたいな。男性美容も盛り上がってきていますよね。アイテムも増えてきて。
早川 ボディケア、スキンケアも含めて、男性がすごく気を使う時代に変わってきたなと感じますね。アロマを使う男性も多いです。男性にアロマが人気なのは、見た目だけでなくその人の持つ匂いも取り上げられるようになったから。女性から多角的な清潔感が求められているのかなと思います。
アロマもエステもアプローチは違うが目的は同じ
編集部 男性のセラピストが増えてくると同時に、男性自身のグルーミングやコスメグッズも増加してきた昨今。いろいろな美容分野でジェンダーレスに仕事が行える時代に近づいています。しかし、エステティシャンとアロマセラピスト、手を組むことができるのでしょうか。お互いにアロマセラピスト、エステティシャンについて印象を教えてください。
早川 エステティシャンは美のスペシャリストですよ。僕らセラピストは癒しのスペシャリスト。でも美には癒しが必要だし、癒しにも美が含まれている、と思います。
とくに女性は美容が好き。「整体」より「美容整体」が流行るように、癒しだけではなく美的な部分が求められていると思いますね。美のアプローチがないと、お客様も続きませんし、例えば足が細くなった、だとかスカートが緩くなった、などの結果がないとダメだと思います。ただの癒しだけではお客様はついてきません。
ヒィロ 結果を求められる、という点は同じですよね。
早川 でも、エステのお客様の方がシビアだと思いますね。使う金額も違いますし。「癒し」にはあまりお金を使わないし、金額の上限がなんとなくある一方で、「美容」には使う。美の要素も必要なので、そういった意味では、エステティシャンは結果をすごく求められているんだと思います。
ヒィロ 結構シビアですね。でも根底は、人をもっときれいにしたいという思いは同じだと思いますね。僕は「美と健康を生きる力に変える」をコンセプトにやっているので、美も健康も表裏一体、どちらかがダメだともう一方もダメなので、エステもアロマも整体でも同じだと思います。ただ、結果はどの分野も絶対ですし、金額はもちろん時間も使うので、その対価に見合った、それ以上の結果をお客様は求めるというところはシビアだと思いますね。
早川 そういった意味でも、癒し美容業界の男性は、すごく注目されている。だからこそ、「本物の知識と技術を持った男性セラピスト」がどんどん増えていくことでこれからが広がると思います。今活躍している男性セラピストも真摯に仕事に向き合っていく必要があると思いますね。
アロマセラピストならではのトリートメントを見学
早川 今日はハンドマッサージにしましょうか。アロマトリートメントはすべてベッドで行います。
ヒィロ 究極に癒やされそうですね。
早川 本来なら欧州などの本場のアロマトリートメントは体を動かしすぎて強く圧を入れすぎるのは失格。しかし、芳香の効能というよりは体感を大切にする日本人には、少しマッサージのような体感があったほうがいいですね。そのため、男のアロマ塾では程よく体重を乗せて重厚感を出すような男性の持ち味を活かしたトリートメントを教えています。
ヒィロ エステティックでは腕や手の甲、指先までトリートメントする施術はなかなかないですから、ハンドマッサージっていいなあと思いますね。雪歩さんはどうでした?
早川さんの「男のアロマ塾」では、女性の施術モデルを募集中。同業者の応募もOKということなので、男性ならではのダイナミックな施術に合わせたメニューやコースを提案したいメーカーの方にもおすすめです。「男のアロマ塾」無料アロマモデル お問い合わせはこちらから
ヒィロさんについてはこちら!
田村貴博(ヒィロ)
取材・文 菅井美知子 / 写真 大森明子 / ヘアメイク 岡山雄飛(air-AOYAMA)
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