もしお給料が入ってなかったら・・・自分レスキューのために知っておきたいこと
あれっ、お給料日なのに振込がない・・・
給与未払いや遅配で問題になることが少なくないのは、エステ業界だけではありません。本来であれば、従業員の給与は一番優先度の高い支払先です。しかし、それが行われない場合は、会社の経営がうまくいっていない、倒産間近と考えて良いでしょう。なぜなら、給与未払いは違法だからです。
まずどうすべき?
働き続けるのはヤバみです。なぜなら、タダ働きをさせられる可能性が非常に高いから。「退職したら払ってもらえないんじゃないか」そう思う方も多いと思いますが、退職後も給与の支払いは請求できます。
しかしそのためには、未払いの証拠を集めておくことが必須になります。
1.未払い給料の金額を確定させること
もらえるはずの給料の金額と、未払い給料が存在することが証明できるものを集めましょう。「合計でこれだけ」と出しても、悪質な経営者だと金額をできるだけごまかそうとしてきます。そうなった場合、本来の給料の金額を示す証拠が必要になるんです。そもそも給料をいくらもらう契約になっていたのかを示す証拠、雇用契約書や労働条件通知書などがベストですが、中小のエステサロンでこれを用意しているところは少ないかもしれませんね。無理み!となった場合、代わりに「もらえるはずだった給料が未払いにされていることを証明する証拠」を準備しましょう。
- 給与明細
- 給与口座の取引明細(通帳)
- 源泉徴収票(年末にもらうやつです)
これがあれば、本来支払われるはずだった給与と、経営者が言っているごまかし金額の差を埋められます。
2.労働していた事実を証明すること
これは、退職前にこっそり集めておきたい証拠たちです。
- タイムカード
- シフト表
- 業務日報
タイムカードやシフト表は、弁護士や労基に提出する時、会社が都合よく改ざんしていることも多いそうです。そうなった場合に戦う武器は以下になります。
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録(おすすめ!)
- メール(ちな証拠能力は低い)
- 会社のパソコンの利用履歴(個別IDがあればログイン履歴などのキャプチャやプリント)
- メール・FAXの送信記録(手書きでサインがあるなど、自分が送ったと証明できるもの)
手書きの記録は、パワハラや離婚など色々な局面で証拠として認められるので、日記や何をされたか、言われたかなどを日頃から記録しておく癖をつけておくといいです。今回の場合は、毎日1分単位で時間を記録し、施術やお客様の数など何を具体的に書いておくのがベストです。なぜ1分単位がベストかというと、信用性に関わるから。たとえば、毎日きっかり00分の切りのいい時間には出退勤しないですよね。1分単位でつけるというのは、リアルなわけです。
これと同様に、嘘の記録をするのもNGです。証拠の信頼性が薄くなり、裁判となった場合、裁判官の心証を悪くし、不利になってしまう可能性があります。
逆に損害賠償されることもあるので「急にやめた」などやらかした人は注意!
少額訴訟や裁判をすれば給与は取り返せるのか?
会社の口座にお金がなく、経理担当者が不在の場合、差し押さえは不可能。裁判をすること自体無意味。
弁護士に相談したところ、このような回答が返ってきたケースもあるようです。要は、ないいものは払えない、ということです。しかし、専門の弁護士に相談すると別の答えが返ってきそうです。これは後ほど触れます。
会社が倒産を認めないなら「事実上の倒産」に持ち込めないか
今話題になっている問題は「遅配があるのに倒産せず営業を続けている」という摩訶不思議な状況にあるようです。こういう場合、事実上の倒産を認めてもらうという方法があります。なぜ社長は倒産を避けたいのか、それは、債務の連帯保証となっている場合、個人としても破産してしまうかも、というリスクがあるからです。また会社を立ち上げても再融資は難しくなるし、個人の信用情報にも傷がついてしまうわけです。社会における脂肪(死亡)になってしまうので、そこからの痩身はどんな機器を使っても難しい、ということを知っているんでしょうね。
手形不渡りによる銀行等取引停止処分を受けた場合
手形の不渡りによって銀行等における手形取引が停止
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資金繰りが破たん
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支払不能またはそれに近い状態
↓
事実上の倒産
(中小企業倒産防止共済法2条2項2号や,企業信用を調査する会社においても,手形不渡りによる銀行等取引停止処分を受けたことが,事実上の倒産の類型に挙げられます)
支払停止によって支払不能が推定できる
↓
事実上の倒産
社長と連絡が取れなくなり、いるはずの場所にいないケース
↓
事実上の倒産
会社の本社を所轄する労働基準監督署長に相談する(証拠になるものを用意)
↓
相談の中で労働者が認定申請書を作成・提出
↓
労働基準監督署から会社に対して資料を提出するよう促す
・・・というのが一般的。
しかし、今回のケースでは、下記のような事態が予想されます。
会社の本社を所轄する労働基準監督署長に相談する(証拠になるものを用意)
↓
会社へ「7営業日以内に支払われない場合は、しかるべき手続きをとる」というような内容証明を提出しろと言われる
↓
支払われなかったらその証拠を持って再度労基へ
↓
ここで認定申請書の届出が受理され、監督官が付く
↓
届出が事実かどうかの調査がスタート。会社に指導を行う。「支払います」と念書を書かせる。
労働基準署ができるのはここまで。これ以上の強制力はないのです。結局、事実上の倒産にまで持ち込めない、ということです。無理み〜!
結局、一番いいのは弁護士に相談すること!
え、弁護士?お金ないし!無理!と思いがちだと思いますが、弁護士にも色々な専門分野があり、みなさん専門分野で活躍しているので、未払い給料請求に強い「完全成功報酬制」の弁護士に依頼することが最良です。「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。
弁護士に依頼した場合の流れ
依頼が決定すると、弁護士はあなたの代理人となります。以後は、会社とのやり取りは全て弁護士に任せることになります。
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弁護士の名前で内容証明を会社に送付
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交渉(もしここで会社側と給与金額の相違が出た場合、自分で集めた証拠が有効になってきます)
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裁判所で労働審判を行う(裁判所で行う交渉のことを言います。ご自身も最低1回は出向いてもらう必要があります)
↓
ここで解決できないと、裁判になります。裁判になった場合、毎回出廷する必要があります。
しかし、だいたい労働審判での決着が多いようです。成功報酬型のこの分野に強い弁護士に依頼すると、解決金額も高くなるのが通例のようです。いいことしかない!
事実上の倒産&倒産した場合は国の福祉制度が使える!
公的な福祉制度として,独立行政法人労働者健康福祉機構による未払い賃金立替払い制度が利用できます。
未払い賃金立替払い制度とは、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づいて,独立行政法人労働者健康安全機構が法人に代わって,賃金の一部を労働者に支払うという公的制度のことです。
未払い賃金立替払い制度は,もちろん労働者側で手続をとることができますが,会社・法人側で用意をしておくということも可能です。今回のケースではどれくらい当てはまるかわかりませんが、「メールを送ったがコピペ定型文しか返ってこない」ということを考えるとしてない可能性が高いような気がしますね。
制度利用のための要件
★事業主が,破産法に基づく破産手続,会社法に基づく特別清算手続,民事再生法に基づく民事再生手続,または,会社更生法に基づく会社更生手続の開始決定を受けたこと,もしくは事業活動に著しい支障を生じたこと
★事業主が、労災保険の適用事業者として、1年以上の期間にわたって労働者を使用して事業を行っていたこと
★未払い賃金があったとする期間中に、当該使用者・事業主に雇用され、労働基準法上の労働者として勤務していた者であること
★労働者が、使用者たる法人による破産手続開始の申立て、特別清算手続開始の申立て、民事再生手続開始の申立て、会社更生手続開始の申立て、または事実上の倒産について労働基準監督署長の認定の申請の6か月前の日から2年間以内に退職した者であること
★請求する賃金が定期賃金・退職金であること
(解雇予告手当、賞与・ボーナス、福利厚生として支払われる給付、通勤手当などの実費、未払い賃金に対する遅延損害金は含まれない)
★退職日の6か月前から立替払い請求日までの間に支払期日が到来する未払い賃金であること
★未払い金額が2万円以上であること
★所定の手続に従って未払い賃金立替払請求をしたこと
★破産手続開始日、特別清算手続開始日、再生手続開始日、更生手続開始日または労働基準監督署長による倒産認定日の翌日から2年以内に請求されたものであること
■退職日時点の年齢が45歳以上の場合
未払い賃金の金額上限は370万円、立替払いの金額上限は296万円
■退職日時点の年齢が30歳以上45歳未満の場合
未払い賃金の金額上限は220万円、立替払いの金額上限は176万円
■退職日時点の年齢が30歳未満の場合
未払い賃金の金額上限は110万円、立替払いの金額上限は88万円
この基準を超える未払い賃金があるんだけど!という場合にも,上記年齢ごとの区分に応じた限度額の8割の金額しか払ってもらえない、という事実。